フィールドエッセイ「旅と自然の心象スケッチ」  第791回

田んぼで見つけた小動物たち

稲刈り前の水田地帯


猛暑続きの8月が終わり、

関東地方ではようやく暑さも一段落しました。

 

千葉県の水田地帯では、あちこちで稲刈りが始まっています。

あの記録的な猛暑は、稲の生育にはプラスだったのか、マイナスだったのでしょうか・・・?

ともあれ、稲穂は黄金色に色づいて、稔りの秋となりました。

 

案山子の帽子にはノシメトンボがとまり、いよいよ収穫の秋です。

 

農道や畦道を歩きながら、

稲穂にとまっている小動物を観察してみました。

どの田んぼでも見られる訳ではないのですが、田んぼは動物の宝庫です。

 

最も目立つのはノシメトンボでした。

稲穂にも、林縁の小枝や先の葉先にも、電線にも、いたるところに止まっており

時には、稲穂の上で雌雄が連結して産卵するシーンも見られます。

 

ノシメトンボ、左は稲穂に止まる♂

右は、稲穂の上で産卵する雌雄、空中に産卵するこの方法を「打空産卵」と言います。

 

この他に、シオカラトンボをよく見かけます。

田んぼの畦や農道の轍などで静止するのが好きで、稲穂にはなかなか止まってくれません。

黄褐色をした、翅の幅の広いウスバキトンボの姿も目立ちます。

南方から飛来し、世代を重ねながら日本列島を北上していく・・・、

と言われています。

 

水田のシノカラトンボ(♂)、ウスバキトンボ

 

トンボだけではありません。

蝶の仲間では、キアゲハやモンシロチョウの仲間もヒラヒラと飛びかい、

キリギリスの仲間のヤマクダマキモドキも発見。

長い触覚を伸ばして周囲を警戒しています。

 

左--モンシロチョウの仲間は、翅を閉じているため、未だ種名がわかりません・・・・

右-ヤマクダマキモドキ 前足の脛節が赤っぽいのが特徴です。

 

びっくりしたのは、ヤマカガシの幼蛇です。

交尾しいてる蝶を撮影しているとき、稲穂の間から顔を出しました。

30〜40pの細くて小さな体、何とも愛嬌のある蛇でした。

稲刈りのときに、コンバインに巻き込まれないよう、しっかり逃げて下さいよ。

 

頚の黄色い環がとても愛らしい(?) ヤマカガシの幼蛇

 

この他にも、いろんな小動物を楽しみましたが

下の写真は、稲の葉をまるめたもので、鳥の巣のようにも見えます。

実は、カヤネズミの巣です。

 

鳥の巣のような、カヤネズミの巣も発見

 

水田は米を生産する場でですが、しかし、けっしてそれだけではありません。

カエルや小魚、ザリガニやミジンコ、トンボや蝶、バッタ、イナゴ、クモ等々の、

多種多様な小動物の生活の場でもあり、稲作と小動物との共存こそが

「安全な米づくりの原点」、と言っても過言ではありません。

 

水田地帯を一巡し、ツバメやサギ類の生態についても

実に興味深い観察がありました。

次回 (792回)をお楽しみに。

 


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