フィールドエッセイ「旅と自然の心象スケッチ」 第1853回


「BIRDS and NATURE of COSTA RICA」 ~あれこれ



2021年7月29日、10時
東京メトロ日比谷線 広尾駅下車
地上に出るとさすがに都心は連日の猛暑、コロナ禍のためにマスクを着用・・・、息苦しくて・・・
六本木通りに面したコスタリカ大使館を目指したのですが
どうも西麻布とは逆方向に歩いているような・・・
昔から太陽の位置さえ分かれば
方向感覚には自信が
あったのですが
都心では通用
しないの
かも・・・

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2021年6月、『コスタリカの鳥と自然』を出版しました。
2018年に『パプアニューギニアの人・鳥・自然』を発行してから3年、漸く出版にこぎ着けました。

まずは自然基金に支援していただい方にお渡ししようとしたのですが
生憎のコロナ禍のため、観察会中止や延期のため「手渡し」することができません。
止むなく、宅配便、郵便などで送ることにしたのですが・・・
7月31日、ようやく送り終えました。

宅配にしても郵便にしても
あるいは空輸や船便、トラック便、バイク便にしても・・・
「物流」は人体の血流のように、命を支え、経済を支えていることを知りました。

1冊送るのに、
スマートレターで180円
2~3冊送るのにレターパックで370円、10冊送るには宅配便で1050円・・・・、
「送料は何と高いものか・・・・」、と思いました・・・。が、しかし
180円で大阪にまで届けてくれる人がいるでしょうか?
明治に英国から導入した郵便制度、
優れものです。

しかも、日本の津々浦々にまで
一軒一軒の家に「住所」があるというのも素晴らしいことです。
見渡す限りビル群が続く首都圏の、ビルの一棟一棟に名称があり
さらにそのなかの何階の何番目に誰が住んでいるのか・・・、それが住所です。
日本に住んでいると、当たり前のことですが、しかし、これから向うコスタリカ大使館でも話題になりましたが
世界にはまだ住所そのものがない国はいくらでもあります。
コスタリカもその一つです。

自分で1冊づつ届けることを想像してみました。
書状を人が運んだ江戸時代、江戸~大阪を3日で届けたという「飛脚便」
もちろん一人の飛脚が走り続けるのではなく、東海道には20ヶ所もの中継ぎ場所があったそうです。
幕府の公用飛脚は57ヶ所の宿場をつないだといいます
言ってみれば「箱根駅伝」で襷をつなぐようなもの。
当時、江戸~大阪を3日で届けた飛脚の費用
現在の価格に換算すると
数十万円だった
とか・・・!!

日本の郵便制度と鉄道制度、いずれも日本を支えてきました。

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コスタリカの本が届くにつれて
メール、葉書、手紙をいただきました、自然基金も送っていただきました。
そしていくつか共通した「質問」、「疑問」をいただきました。

■質問~「1」
タイトルを「 BIRDS and NATURE of COSTA RICA 」としたり、写真のキャプションを「英語」にしているのはなぜ・・・?

回答
コスタリカでお世話になった人、コスタリカの子どもたちが
写真とキャプションを見れば、内容をある程度理解していただけるのではないか・・・、という期待です。
実は、そのためにも、今、広尾駅からコスタリカ大使館へと向っています。

■疑問~「2」
表紙や裏表紙、目次まで、唐沢さんがやったにしてはデザインがとても綺麗すぎる・・・・?

回答
さすがに鋭いです・・・、
今回はプロのデザイナー、義弟にお願いしました。
表紙の「英文字」、「グリーンの帯」、「ハチドリの写真のトリミング」・・・・・
超高性能の業務用のパソコン画面で、私の目の前で、瞬時に作製してくれました。
表紙の裏にある「動植物のスカーフ」がたなびく写真が、裏表紙の裏へとつづく・・・
そんな発想は、逆立ちしても私にはでできません・・・

■質問~「3」
中とびらの「カエルの絵」、K.tomoru とありますが・・・?

回答
個人的な嗜好で申し訳ありません。
孫(カエル大好き)が、小4か小5のときに授業で描いたものだそうです。

■疑問~「4」
発行所(印刷所)がありませんが、どこで印刷したものすか・・・?

回答
市川市内にある「弘文社」という印刷所です。
『パプアニューギニア、人・鳥・自然』も弘文社から出版しました。

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いただいた返信の中に、
残念なこともありました。

■その1
「コスタリカの鳥と自然」、有難うございました。
実は、母は5月に亡くなりました。3月の検査で癌がみつかり、4月に入院しましたが進行が思いのほか早く・・・
母は、先生の観察会をとても楽しみにしており、昨年の誕生日(80歳) にはバードウオッチングに使うリュックをプレゼントしたばかりでした・・・。

■その2
ご連絡が遅くなり失礼しました。
実は、父は昨年11月より高齢者介護施設に入居しています。
コロナ禍で、直接会うこともできず、スマホのビデオ通話では私のことが分からないようです・・・
長年にわたり父がお世話になりましたこと、感謝しております。

■その3
小坂一郎さん(仮名) のいとこです・・・
実は、小坂さんは、ずっと前にご両親が他界し、数年前に弟さん、妹さんも亡くなられました・・・
88歳で認知症のために、昨年施設に入所し、いとこの私が郵便物などをおあずかりしています。
お送りいただいたご本ですが・・・、本人が分かるかどうか・・・?

■その4
石田悟史(仮名)の妻です。
夫は病気のため昨年1月に亡くなりました。70歳でした。
いつも自然基金のご本を楽しみにしていました・・・・、残念です。私の名で基金をお送りします。

観察会を楽しんだ気品あるご婦人・・・、若かったころの教え子の顔、もう二度と会えません。
皇居や大手町でカラスやツバメを調査した仲間・・・・、群馬の自然保護と生物教育に尽力した大学の先輩・・・・、入所して遠くへ行ってしまいました。

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広尾駅から徒歩15分、道を迷いながらも、何とか大使館にたどりつきました。
一冊を大使に贈呈したところ、「ぜひお会いしたい」とのこと、
大使館のドアーをノックしたのでした。



「コンニチワ、カラサワです」
「コンニチワ、カラサワさん、よくいらっしゃいました。 Can you speak Spanidh or Englsh ?」
「No, I can not both.. (コロナ禍で人と話してないので、日本語もうまく話せません・・・)」

スペイン語のできる職員が通訳してくれました。


アレクサンダー・サラス・ヤラヤ大使に、改めて本を贈呈

「コスタリカの鳥と自然、とてもQualityの高い本をいただき、有難うございます。出版の動機や目的は何でしょうか・・・?」、
「コスタリカには、これまでツアーで3回・ど出かけました。その自然の素晴らしさ、鳥や昆虫、植物の多様性の素晴らしさに感動しました。
撮りためた写真をこのままにしてあの世に行ってしまうと、死蔵してしまうのは惜しいと思いました。」

「コスタリカでは、あの世 (天井を指差して) に行くには善行をしないと・・・・、私はこっちです (指を下に・・) 」
「私もあっちなのか、こっちなのか・・・? どっちにしても、日本人は、いずれまた生れかわってこの世に戻ってきます・・・」
「写真キャプションは英語なので、コスタリカの人にも写真をみて楽しんでいただけると思います」


「この本、コスタリカにとっても素晴らしいことです。コロナが終息したら、是非、コスタリカにお出かけください。」
「大使館のあるこの建物には、いろんなイベントができる場所かがあります。写真展なども可能です・・・」

「コスタリカでは、リヒア・ゴンザレスさんにお世話になりました。
リヒアさんは、私の記憶では・・・、日本のコスタリカ大使館で働いていたことがありました・・・・、ご存じですか?」

「知ってます、日本人と結婚されました。その後、離婚し、再婚しました・・・」

「リヒアさんにこの本を贈りたいのですが、送れますか? 」
「難しいです。住所がわかりません。コスタリカの住所、教会から三軒目とか、大きな木の横とか・・・
大きな木が切られなくなっていることもあります・・・(笑)」

そういえば、パプアニューギニアでも
お世話になった現地のNPO法人に本を送ろうとしたのですが、できませんでした。
「私書箱」のようなものがあるらしいのですが、それも大都市にいかないと受け取れません・・・・・

「大使は立派な体格です。若いころはレスリングでも・・?」
「いいえ、わたし、SUMOU、スモウ ・・・・」 「シバマタ 大好きです」
(大使のジョークに爆笑)

スペイン語と英語と日本語・・・入り交じり
あっという間に1時間以上が経ちました・・・、あれもこれも・・・・、friendly、初対面とは思えないような楽しい懇談でした・・・


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ささやかな一冊です。
楽しんでいただいた方、喜んでいただいた方もたくさんおられました。
人生の後半、残り時間も少なくなってきましたが、こんな我が儘な出版ができて・・・有難いです。
ご支援いただいたのに、急逝された方、施設に入られた方もいました。
いずれまた、「あっち」か「こっち」か分かりませんが
お会いできる日を楽しみにしています。
コスタリカの大使とは、できれば
「あっちで」お会いしたい
ものです。


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