フィールドエッセイ「旅と自然の心象スケッチ」  第780回

バン一家の子育て法

親鳥〜幼鳥〜雛鳥


2007年8月1日

関東甲信越地方では、ようやくこの日に梅雨明け宣言がありました。

都市の中にある小さな公園の池でバンの一家を観察しました。

 

ヨシやヒメガマなどの植物群落の周辺はスイレンの葉で水面がおおわれています。

葉の上を真っ赤な嘴や額の目立つバンがゆっくりと移動していきます。

さらによく見ていると、いろいろなことが分ってきました。

 

ちいさな公園の池

ヒメガマやヨシの群落の手前にバンが生活しているスイレンの葉がひろがっている。

 

バンは、親鳥2羽、幼鳥3羽、そして人のこぶし大のちいさな雛が2羽います。

合計7羽はバラバラに生活しているのではなく、同じ家族のようです。

1羽の親鳥が1羽の雛を引き連れ、もう1羽の親鳥がもう1羽の雛を連れて移動していることもあります。

1羽の親鳥の後を2羽の雛がついていくこともあり、親子4羽が一緒になったりもします。

ですから親鳥2羽と雛鳥2羽とは親子だろうと思います。

(もちろん、本当のことは分りませんが・・・)

 

バンの一家・・・・左は親鳥と雛鳥、右は幼鳥

この池には親鳥2羽、幼鳥2羽、幼鳥3羽の合計7羽の家族が生活しています。

 

親鳥が小魚を捕らえました。

雛は大きく口を開けてピィ ヒヒ ィと鳴きますが、それだけではありません。

左右の翼を斜め上方に伸ばして、激しく振るのです。

翼は指のように分かれており、羽毛がなく、橙赤色をしているのでとても目立ちます。

その時の様子を下の写真でご覧下さい。

 

雛は、嘴や声の他に翼も震わせて餌を乞う・・・

 

翼は空を飛ぶための器官だと思っていましたが、餌乞いにも使うんですね。

こうした雛を見てしまった親鳥は、もう給餌したくて仕方なくなるようです。

親鳥を育雛へと駆り立ててしまう、雛鳥のしたたかさ

たくましさをかいま見た思いです。

 

不思議なのは幼鳥の行動です。

幼鳥といっても大きさはもう親鳥と変わりませんが、灰色がかった地味な色彩です。

おそらく、今春に巣立ってここまで成長したものと思います。

一鳥前にスイレンの葉の上を歩き、餌をとることもできます。

 

おや、と思ったのは、この幼鳥が雛鳥に餌を与えることがあるのです。

未成熟の幼鳥が、雛に給餌するとは、いったいどうなっているのでしょうか。

 

雛へ給餌する幼鳥・・・、左の後方にいるのは親鳥

 

幼鳥3羽と雛2羽は、同じ親から生まれた兄弟姉妹であり

先に生まれ育った幼鳥が、後からうまれた雛に給餌してる・・・・・、のではないかと思います。

両親の子育てをお手伝いするヘルパーではないでしょうか。

足環などをつけて親子や兄弟姉妹を確認したわけではありませんが、

ヘルパーの存在はツバメやエナガなどでも観察されています。

東洋の某国では、少子化に悩んでいるとのことですが、

「女性は産む機械」などといった低次元の認識で、子育て支援を怠っていると

バンに笑われてしまいます。

 

雛が育つまで、バン一家のここでの生活はしばらくは続くことでしょう。

さらなる発見がありましたらまたお知らせします。

 


 

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