フィールドエッセイ「旅と自然の心象スケッチ」  第728回

春の見沼たんぼ観察記

バーダー 自然観察会


2007年4月28日(土)

鳥の雑誌『バーダー』主催の唐沢流バードウォッチングを見沼たんぼで行いました。

連載中の唐沢流バードウォッチングの読者の皆さんと一緒に春の田んぼをのんびりと散策しました。

今回は、潟jコンビジョンの後援。双眼鏡や望遠鏡、ファーブルフォトなどの機材の支援が得られました。

 

さて、さて、気になるのは春の天気。

予報では午前中は晴れ、午後には寒気の通過に伴い雷雨となり、ところによってはアラレも降るとか・・・。

GWの予報なので天気を悪く公表するというのが気象庁の常套手段。

悪天の予報が見事に外れても誰も文句は言わないが、

その逆の場合には、大いに怒り、抗議殺到というのがこの世の常。

「雷雨の予報はあるものの、大したことはあるまい・・・、朝から晴れているではないか・・・」

と思いながらのスタートとなりました。

 

「唐沢流バードウォッチング」といいながら、鳥ばかりを観察するのではありません。

フィールドに出れば、鳥もいれば昆虫もいる、魚もいればカエルもいる。雑草の花も咲いている。

鳥もみるけれとも、鳥の生活している舞台である自然も観察する・・・

これが唐沢流の自然観察です。

 

といいながら、まずは集合場所である「東浦和駅前のツバメ」

2階建ての駐輪場(一部は3〜4階建て)に沢山の人が出入りしています。

窓が空いており、ツバメが盛んに出入りし、いかにもツバメが営巣するのに適しているのですが

その理由について考え、解説しました。

 

ツバメが多数繁殖している東浦和パーキング

 

入口で係の人にお願いし、建物内に入れてもらいました。

蛍光灯の上、1〜2階の通路の壁面、そして2階の窓のわくの内側などに巣があり

すでに抱卵中のもの、巣作り中のもの、求愛やら巣場所をめぐる争奪戦も展開。

窓のわくの上あたりに、ツバメが泥を塗り付けた跡がずらりと並んでいます。

ツバメだけでもけっこう楽しめます。

 

オートバイのバックミラーで休憩中のつがいのツバメ

 

巣をめぐって雌同士が激しく争うシーン

4月26日に下見にきたときに撮影したのが下の写真です。

 

巣場所をめぐって激しく争うツバメの雌

 

樹木では、カシワ、アカメガシワの葉について観察し

草本ではカラスノエンドウの花、托葉の裏で蜜をだしている花外蜜腺などをみながら

ツバメ、スズメ、ムクドリ、オナガ、カワラヒワ、キジバト、モズ、ハシボソガラなどのおなじみの鳥をウォッチング

田起こし前の水田で、10羽ほどのキジバトの群れが雑草を食べていました。

 

水田雑草を食べるキジバト

 

枯れたヨシ原から

オオヨシキリの鳴き声が聞こえました。

「どこで鳴いているのかな・・・?」 やや距離があり、なかなか見つかりません。

「あっ、あそこにいる、枯れた穂の先に止まっている、あの電柱のところをずっと手前にきたことろです・・・」

望遠鏡に入れてみると、渡来したばかりのきれいな雄、囀っています。

ヒバリが上空で囀り、軽やかなセッカの声がこれに加わります。

水質の悪い芝川でも、魚をくわえたカワセミを観察。

イチョウの葉、カラスムギの種子にも言及。

 

水田地帯を東西に走っているのがJR武蔵野線

線路にそって、50〜60mもの石垣が続き、ここはフタモンアシナガバチの大アパートです。

 

石垣にはフタモンアシナガバチの巣がある・・・

 

石垣のすき間に注意すると、あるある、次から次に巣が見つかります。

合計20個以上も発見。さてと、これらのハチの巣の運命や如何に・・・、(ここでは省略します)。

 

 

巣作りと産卵、子育てを行うフタモンアシナガバチの女王

 

ハチの巣を探しつつも、チョウゲンボウが気になります。

高圧線や鉄塔に止まり、ときには上空を旋回します。

斜面林に近いマンションの屋上のテレビアンテナにいることもあるのだが・・・。

う〜ん、残念、現れてくれません。

 

その代わりにか、ヤナギの木に飛来したのが1羽のコゲラ

有難いことに、接近しても飛び立つ気配なし。一ヶ所に止まったまま、同じところをつついています。

つついているのにコンコンという音がしません。「変な採餌法だな・・・?」 と思いつつ、

注意深く双眼鏡 (→この日はすべてニコン製) でみるに、幹の一部から樹液が浸み出ています。

そこにいる昆虫を食べている・・・、ようにみえました。

 

一ヶ所で採餌しているコゲラ、人をあまり警戒しない・・・

 

このコゲラ、ときどき嘴を大きく開き、なにかを吐き出そうとします。

何回も嘴を開くのに、のどにひっかかっているらしく目をキョロキョロしているばかり。

ペリットを吐き出そうとしているようですが、決定的な瞬間はみられませんでした。

 

何回も、何回も、なにかを吐き出そうとするコゲラ・・・

角度によっては頭部の赤い羽毛も観察できました・・・、雄だったんですね。

 

見沼たんぼの東の端に南北に連なる緑地は、

「川口市金崎斜面林」といい、クヌギの巨木、イヌシデ、アカシデ、ウラジロガシなどからなります。

斜面の下の林縁にそって道があり、立ち入りできないよう針金のフェンスが巡らされています。

そのフェンスがまた、ゴミグモの観察に最適。ルーペでじっくりと観察。

 

そして極め付きは、ヨコヅナサシガメとニホンミツバチの巣。

クヌギのゴツゴツした幹に張りつくようにヨコヅナサシガメの5齢幼虫が潜んでいました。

4月26日の下見のときには、たまたま脱皮したばかりの真っ赤な成虫に出合えました。

 

脱皮したばかりのヨコヅナサシガメ、見事なばかりの朱色です。 (4月26日撮影)

 

下見のとき、偶然に出合ったニホンミツバチの分封

新女王が誕生すると、旧女王は巣を出で新しい巣へと転居→これを分封といいます。

新しい巣場所が見つかるまで、一時的に集合し、あちこちに偵察隊を送り出すのですが

そのときの、ブンブンとにぎやかなこと・・・、下の写真がその分封シーンです。

 

ニホンミツバチの分封 (4月26日撮影)

 

さて、予定の時間を大幅に遅れ

13時ころに昼食をとる予定の場所に到着。

盛り沢山の観察のあとで、空腹であることに気づく始末。

昼食をとり、ニコンビジョン提供のファーブルフォトでキジの羽を拡大して観察。

バーダー7月号の唐沢流バードウォッチングに登場予定のキジの羽毛を拡大して見ました。

う〜ん、野外で、双眼実態顕微鏡としても観察できる、デジカメでの撮影も可能、何たる優れもの。

パンフレットでは知っていたものの、こうして実際に観察し、撮影して見ると

いかに使い勝手がよいか、応用範囲が広いか。

一台あると確か便利です。

 

「ニコン・ファーブルフォト」でカラスノエンドウの蜜腺を観察する参加者

撮影した画像は後日送ってもらうことになっています・・・

乞う、ご期待。

 

お弁当を食べ、ファーブルフォトを楽しんでいるうちに

何やら雲行きが悪くなりました、急変です。いきなりゴロゴロと鳴り響くありさま。

「みなさん、駅へ急ぎましょう、撤収です、テッシュウ・・・」

見沼田んぼの東縁 (ひがしべり) から芝川にたどりついたころには雨傘が必要になり

西縁 (にしべり) からカシワの木についたころには雨足は一段と激しくなり、

東浦和駅の直前では大粒のヒョウがバラバラと落下し

歩道に氷の塊が転がっていました。

 

気象庁の天気予報、甘くみてはなりませんね。

「反省」です。

 

かくして雷雨に見舞われながらも、これまた貴重な自然観察

素晴らしい体験となりました。

参加者のみなさん、お疲れ様でした。

バーダー編集部のみなさん、潟jコンビジョンの担当のみなさん、ご苦労様でした。

 


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