フィールドエッセイ「旅と自然の心象スケッチ」 第1661回
2018年 ご挨拶



昨年はいろいろとお世話になりました。
本年も宜しくお願い致します。





昨年は、国際的にも、国内的にも、大きな問題を抱えながら
どれ一つ解決することなく、結局は先のばし、
といったことの多い年でした。

中東パレスチナから far east の地、日本近海にあっても
北朝鮮による軍事的挑発あり、トランプ政権の危うさあり
いつ、いかなる事態が勃発してもおかしくはない
波瀾含みの2018年の年明け
となりました。

年末には、
いろんな方から喪中のお知らせもいただきました。
いずれは誰にもやってくるであろう永遠の別れ、それがここ数年、
「いずれ」ではなく、とても現実味を帯びてきました。
父母が去り、叔父叔母が去り、兄も去り
「めでたさも、中ぐらいなり」
一茶の心境です。

立川涼先生(高知大学学長)、両国高校の元同僚であった秋元健一先生
太田隆雄先生、赤坂正雄先生、広沢丈夫先生など、次々に鬼籍に入られました。
作家では、『蜩(ひぐらし)ノ記』の葉室麟さんが12月23日に66歳で他界
敗者への温かい眼差し、注目していた作家だけに残念です。

ところで、
このフィールドエッセイの更新
秋以降にペースが落ち、ご迷惑おかけしました。
基金にご支援いただいている皆さんには、次なる企画として
パプアニューギニアの自然と鳥に関する生態小図鑑を発行予定ですので
辛抱強くお待ちいただければ有難いです。

十分な時間がとれなかったのは、
この春発行予定の中公新書の執筆と取材に時間をとられてしまったこともありました、が
12月末の原稿締め切りには何とか間に合わせることができました。
タイトルは未定ですが、『○○○の自然観察』あたりに
落ち着くのかどうか・・・、もうしばらくは
編集で多忙になりそうです。

今年がどんな年になるかは分かりませんが
フィードに出ての観察会を、今年も目一杯予定しています。
年3回の自然観察大学による定例の観察会をはじめ、品川自然観察会、
カラサワールド自然観察会、カラサワールド八潮の会、カラサワ自然観察会、木鳥会(目黒区)。
鎌ヶ谷市の自然観察会はもう10年以上続いています。
6月には「宮古島」の鳥や自然を観察するツアーを
企画しています。

また、
個人的に行きたいところも山ほどあります。
島固有の鳥をみたい、半島の先端から渡り鳥をみたい・・・・際限ありません。

その一方で、やはり近場での観察も楽しみです。
以下は、最近出かけた市川市内のじゅん菜池緑地都立水元公園で撮ったもの
近況報告として掲載してみました。




距離にして3m、
なぜか全くこちらを気にすることなく、じっと水面を見つめています。
順光を浴びて頭から背や肩、尾までの美しいコバルトブルー
水面は空の青を映し、カワセミの色彩が溶け込んで
見事な保護色に見えました。




オナガガモのカップルとおぼしき2羽
岸辺の土手で日光浴をしていました。
つい最近、カモ類の生態に詳しい福田道雄さんと連絡をとったところ
越冬中のカモ類は、北国の寒さを避けて飛来するのだが、しかし、もう一つの目的がある。
越冬中にはしっかり婚活し、カップルを形成すること・・・・、とのことでした。
因みに、福田さんが現在集中しているのは「日本のペンギン史
いずれ詳細が発表になるかと思います。

年末に、田仲義弘さんより
珍しい鳥が水元公園に入った、というメールをもらい、早速に行ってきました。
珍鳥中の珍鳥なので、鳥の名は伏せておきますが
お目当ての鳥は残念ながら現れませんでした、が
ごく普通の鳥を楽しんできました。



ヨシ原を切り取った湿地にいるのはキジバト
座り込んで日光浴をしているようです・・・、その前にいる2羽の鳥はタシギ
嘴を肩に差し入れて、じっと身動きしませんが、目をしっかりと開いて周囲への警戒は怠りません。
タシギまでは約10メートル、やや距離がありました。

ところが、驚いたことに
下のキジバト、ハクセキレイ、地上で採餌しつつ、何と、どんどん接近してきます。
人との距離は5メートル、3m、そしてついには1メートル
望遠レンズでは撮影できなくなりました。



大勢の人が行き交う水元公園
徐々に人馴れが進んでしまい、ついには人を恐れなくなったかのようです。
この他にも、コサギ、ダイサギ、タヒバリ、モズ、シジュウカラなどもまた人を恐れません。
う~ん、これがよいのかどうか・・・・、ふと、昔、ロンドン市内の公園で
足元にやってくる沢山の鳥を観察した時のことを思い出しました。
1990年夏でしたので、28年前のことになります。

人と鳥との距離を見れば
その国の、あるいはその地域の野鳥保護の状況が見えてくる・・・・
その意味で、今、水元公園では、鳥が大事にされている
ということが、鳥との距離で分かってきます。

メタセコイヤ林の林床では
7~8羽のカラスが群がって、地面をつついて何かを食べているようでした。
ハシボソガラスの群かと思ったら、ハシブトガラスも混じっていました。
異なる2種類のカラスが、一緒に何かを食べている・・・
何気ない光景でした・・・、が、こうして一緒にいる・・・
とても不思議に思えました。



ささやかな観察ではありました、が
「なんだろう」 「どうしてだろうか」 という好奇心は、まだまだ衰えてはいないようです。
今年も小さな観察を積み重ねながらフィールドでの観察を楽しみたいと思います。
どうぞ宜しくお願いします。

また、皆さんの益々のご活躍、ご多幸を
お祈り致します。



唐沢孝一のページに戻る

エッセイの目次に戻る