フィールドエッセイ「旅と自然の心象スケッチ」  第1500回

吹上御所の自然観察会

2014年5月10日、17日



4月23-25日には奄美大島
4月29日には両国高校生物部の自然観察会がじゅん菜池公園などでおこなわれ、
その後も、次から次へといろんな場所で自然観察会に参加してきました。


5月4日(みどりの日) 印西の水田地帯
5月6日 自然観察大学の観察会の下見(見沼タンボ)
5月7日 皇居・東御苑 (カラサ品川の会)
5月8日 小石川植物園(木鳥会)
5月10日皇居自然観察会
5月11日 自然観察大学観察会見 (沼田んぼ)
5月12日 渡良瀬遊水地(フクロウ・トラフズク)
5月16日 大町自然公園(アオダイショウ)
5月17日皇居自然観察会


本当は、
その一つ一つを丁寧にエッセイとして
報告せねばならないのですが
申し訳ありません。

ちょっと写真で、
ハイライトだけをご紹介します。



新緑の小石川植物園、樹木と昆虫、鳥などをウォッチング
5月8日、木鳥会の観察会




5月12日、内田孝男さんの案内で、
渡良瀬遊水地でフクロウやトラツグミの幼鳥を観察しました。





5月12日、山部直喜氏の案内で
埼玉県内の架橋で繁殖中のチョウゲンボウを観察しました。





5月16日 大町自然公園で
カルガモにどんどん接近するアオダイショウを観察しました・・・・
この後の顛末についても書きたいのですが、
際限がありません・・・


いろんなフィールドで折々の生物を観察してきました、が
特にこの春は、「皇居の吹上御所」に入る機会がありました。

皆さんご存じのように、
皇居の「東御苑」は一般に公開されており、
大手門から二の丸庭園、旧本丸、天守閣跡など
自由に入ることができます。

また、東御苑をフィールドにして
数年前からボランティアガイドの方が、
来苑者に動植物はもとより、江戸城の歴史や遺構等々について
丁寧に案内してくれるようになりました。

実は、筆者はそのガイドリーダーを養成するための講座の講師の一人として関わってきましたが、
ガイドリーダーの皆さんの要望により、この5月に吹上御所の自然を学習することになり
元科博の近田(こんだ)先生と筆者の二人が案内することになった次第です。
吹上御所は、正月や天皇誕生日の一般参賀の際にも中には入れません。
いわば自然界の「聖域」の一つです。

下の写真
北桔橋からの景観です。
眼下の乾濠の対岸には乾門から坂下門に通じる櫻並木が、
その櫻並木の奥に、鬱蒼とした森があるのですが、
「そのあたり」が吹上御所なのですが
見ることは叶いません。



乾濠の対岸には吹上御所があるのですが・・・・
見ることも、入ることも叶いません。


「入れない」、「見ること叶わず・・・・」
となると、なおさら入ってみたい、見てみたい、というのが人情です。
しかし、見たい、入ってみたいという欲望は、かなえられることなく、
そっと心の奥深くに温めておくのもまた詩情をかきたててくれる
に違いありません。

高校時代に愛読した某詩人は
まだ見ぬ西洋の世界を夢見つつ、旅立つことが叶わないがゆえに、
感性にあふれた詩を残してくれました。



ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し
せめては新しき背廣をきて きままなる旅にいでてみん

汽車が山道をゆくときみづいろの窓によりかかりて
われひとりうれしきことをおもはむ
五月の朝のしののめ
うら若草のもえいづる心まかせに



下の写真は
つい最近、話題になった皇室の馬車です。
キャロライン・テネディー駐日大使が就任の挨拶の際に
東京駅から皇居へと向った・・・、あの馬車もまた、をこうして日々、皇居内で訓練しています






ともあれ、
聖域の垣根を低くして
皇居・吹上御所の自然といえども、一般国民に公開し、
自然そのものを見てもらいたい、というのが陛下のご意向である、と伺っています。
春には親子による観察会が、秋には一般の観察会が企画されており、
応募者多数による抽選のため、なかなか入れません。

聖域と言われた皇居の自然ですが、
聖域としておくほうがいいのか、日比谷公園のようにオープンにするのがよいのか、
聖域なればゆえに、様々な想像が心を満たし、豊にしてしてくれる可能性もありますし、
あるいは、ますます神秘性を増して、皇室の権威を高めようとする可能性もあるかも知れません。
しかし、公開により、どんな聖域と言えども自然の法則にそって動植物がくらしている、
ということをことを知って欲しい、皇居もまた、新宿御苑や明治神宮と同様に都会の森の一つである、と理解される・・・・
神秘のベールを剥がし、オープンしたい、皇居の自然の良さ独り占めすることなく、
多くの人と分かち合いたい・・・、科学者としての陛下の意向が
感じ取れます。

皇居の奥深くに広がる森を一目見たい、という心理は
墳墓や遺跡の発掘とも関係し、開かれた皇室として注目されるところです。

他方、見たいものが見られない・・・・・
行きたいところに行けない、欲しいものが手に入らない、
そこから瑞々しい感性を磨いた
あの詩人も素晴らしい
と思いました。


追記
今回の吹上地区での観察会は、写真撮影が禁止だったため
しっかりと観察した新種の「フキアゲニリンソウ」の画像などがありません。
皆さんにお見せできないのが残念です・・・、が
「それもまたよし」、としたいと思います。

 


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