フィールドエッセイ「旅と自然の心象スケッチ」  第1350回

真鶴半島、クロマツ林を歩く

2011年9月8日 木鳥会


 

真鶴半島の森

何回観察しても飽きることはありません。

今回は、目黒区の木鳥会のみなさんを林内に案内したのですが、

クロマツやクスノキの巨木には圧倒されてしまいますし、森が形成されていく仕組みもよく分ります。

生物の教科書に出てくる、「森の階層構造」であるとか、陽樹林から陰樹林への遷移なども

この真鶴の森に入れば一目瞭然です。

 

クスノキの樹冠

 

「見上げると、巨木の一本一本が枝の先端部に葉を広げており、あたかも大きな傘をさしているようにみえますね。

その広げた傘の部分を樹冠(ジュカン)といいます。樹冠と樹冠が接していますが、しかし、重なることはありません。

太陽の光を、樹木が分け合って、無駄なく利用している様子が分ります。」

 

樹冠にポッカリと大きな窓が空いています。

開いた窓から、薄暗い森の中に光が差し込んできます・・・

 

「ここはクスノキとクロマツの森です。クスノキは成長がはやいので、100年もすればこんな巨木になります。

巨木が倒れたり、枯れることもありますが、そうすると、樹冠の一部が抜け、このように青空がみえます」

「この樹冠の部分に開いた窓から光が差し込んできます・・・、これをギャップ(gap)といいます。

光が林内に差し込んでくると、種子が芽生え、それまで生育できなかった植物が成長し、

森に新しい命が吹きこまれます」

 

クロマツの切り株を観察する木鳥会の皆さん

 

この切り株はクロマツですが、枯れたために伐採されました。

年輪を数えてみると、300〜350年くらいあります。

枯死した理由は分りませんが、周辺のクスノキなどに覆われて、樹勢が衰えたか、

あるいはマツノザイセンチュウの被害を受けたのかもしれません・・・

 

真鶴のクロマツ、

巨木であることは確かですが、大きさはどれくらいなのでしょうか・・・

木鳥会のみなさんの協力を得て、樹高、幹の太さなどを計測して見ました。

 

こんな大きな樹の高さはどう計ったらいいのかな・・・?

クロマツに登って綱を垂らして長さを計る・・・・、なんてことは出来ません。

そこで、考えた簡便な方法が下の写真です。

 

クロマツの下に立って記念撮影

 

人の背丈と樹高とを比べ、おおよその樹高が分ります。

写真から判定すると、樹木は、人の背丈の約17倍ありました。

身長を約160pとすると約27mになります。

 

幹の太さを測定してみました。

3名の大人が手をつなぎ、ようやく一周する長さでした。

 

クロマツの幹の周囲を計測してみました。

(胸の高さで測定するのですが・・・、やや高い位置で計測してしまいました)

 

メジャーでの計測では372p。

幹の周囲が372pなので、直径は3.14で割ると、118pとなります。

別のクロマツを計測してみると、今度は350p。直径111.5p。

本当は、何十本も計測し、データを処理するのですが、

今回は自然観察会なので、何本かを調べて終了。

それにしても巨木です。

 

森を一巡し、

レストランのある「ケープ真鶴」に戻り、昼食。

店内の一角に真鶴半島を紹介するコーナーがあり、

切り株が展示さていました。

 

枯死したため、2008年12月に伐採したクロマツ

 

年輪から約350年

1658年、江戸の初期のクロマツです。

徳川幕府の命により、小田原藩が1661年(寛文元年)に15万本のクロマツを植林した

という記録が残っているので、おそらくその中の一本かと思います。

 

鬱蒼としてクロマツやクスノキの森

セミが鳴き、蝶が飛び交い、魚つき保安林として近海の漁場を潤している森ですが、

溶岩や草原であった半島に、先人が植林したクロマツだったんですね。

 


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