フィールドエッセイ「旅と自然の心象スケッチ」 第1242回
真夏の水元公園〜オニバス、ハス、ウチワヤンマなど
カラサワールド品川の会 2010年7月21日
今年の天候、異常づくめです。
4月に都心でも降雪があり、梅雨明け後は猛暑の連続です。
これを異常気象というか、地球の歴史からすればそんなものかも知れないと見るかは別として、
昨年が冷夏であっただけに、この暑さは堪えます。
そんな猛暑の7月21日、
品川区の自然グループを案内し、都立水元公園で観察会を行いました。
都心の気温は34〜35℃、街中での体感気温は40〜50℃を越えたのではないかと思います。
「こんな暑い日の水元公園、会の行事でもなかったら、絶対に来ませんね」
参加者はわたしを含めて全員がシルバー、無理をしないで、無事に終えることが最優先です。
暑さの中、ささやかな清涼感を与えてくれたのがハスの花でした。
猛暑にもめげず、涼しげに咲くハスの花
泥沼の中で育ちながら、なぜこうも美しく咲かせるのか・・・
どんな劣悪な環境にあっても、かくも美しく生きたいもの。
人生訓にも引用される所以です。
人生訓の基本は「たとえ話」
「ハスの花のように美しくありたい」という願い、わからない訳ではありません。
しかし、「たとえ」は、あくまでも「たとえ」です。
「泥沼の環境→劣悪な環境」 というのはどんなものでしょうか・・・?
しかし、こんな暑いさなか、そんな暑苦しい話しはしたくありません。
ここでは、ただ、涼しげなハスの花に感謝です。
「皆さん、岸辺をよ〜く見て下さい。トンボが飛んでますよね。その腹部の先端付近を注目して下さい」
「ウチワヤンマと言って、腹部の第8節にうちわのような形をした突起があるんです」
「あっ、見えた、見えた、確かにうちわみたい」
「そっちの杭の上に止まってるのが見やすいですね」
「このウチワヤンマ、ヤンマという名ですが、サナエトンボの仲間なんです。
ヤンマ科とサナエ科のちがいは、複眼の大きさで見分けます。サナエの複眼は小さく、左右が離れてます。」
「双眼鏡で、そこまで注意して観察してみて下さい」
杭の上に止まっているウチワヤンマ、腹部の先端付近にウチワ状の突起がある。
「杭の上のウチワヤンマですが、とまり方をみて下さい・・・、何か気づきませんか・・・?」
「先生、腕立て伏せでもしているんですか? ちょっと前のめりですが・・・」
「確かに、前のめりですね。腹部の先を斜め上に上げて止まってますよね」
「こんなに暑いのに、どうしてこんな苦しそうな姿勢してるんですか?」
「暑い日には、ウチワで太陽をあおぐんです」
「えっ、本当ですか?」
「冗談は別として、体を真っ直ぐ太陽の方に向ければ、体に当たる太陽光は少なくなりますよね」
「なるほど、体温を上げないためのエコスタイルですかね。気温の低い日には真横になるんですか?」
「そうかも知れませんね。機会があったら観察してみましょう」
さてと、いよいよお目当てのオニバスの観察です。
午前中に開花し、午後には閉じてしまいます。
暑いので、ゆっくりと急ぎましょう。
オニバスの葉は、「刺だらけ」です。
蕾は、その葉を打ち破って現れます。
水面を埋めつくしたオニバスの葉、その葉を破って、蕾がでてきたところです。
葉の大きさに比べ、花はとても小さく感じます。
「鬼蓮」とは何とも恐ろしい名ですが
花は小さく、濃い紫色をしており、あまり目立ちません。
トゲトゲの葉を破って花を咲かせているオニバス
オニバスは
ハスとはちがって一年生の植物です。
花を咲かせ、種子をつくって枯れ、翌年に再び種子が発芽して成長してきます。
水底で種子が発芽するため、水質が汚濁すると光が不足し、光合成が抑えられ生育できません。
本州の西側より南に自生していた南方系のスイレン科の植物ですが、
水質汚濁や都市化により、各地で消滅したそうです。
水元公園でも絶滅したと考えられていましたが、旧水産試験場の水域で自生が確認
昭和59年3月22日、学術上貴重な植物として
東京都の天然記念物として
指定されました。
観察会を終え
金町駅の近くで昼食をとりまました。
コンクリートで固められた駅前ロータリーをちょっと歩いただけで、頭がふらふら〜としてきました。
ウチワヤンマやオニバスに熱中しすぎての「熱中症」、危ないところでした。
なんとか無事に終了、「真夏の昼の夢?」のような一日でした。
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