フィールドエッセイ「旅と自然の心象スケッチ」  第1200回

魚道に集まってきたアオサギ、コサギ、クロサギ

2010年4月18日


 

フィールドエッセイ、1200回となりました。

フィールドで出くわした様々な生物や自然の現象について、

思うがままに、感じたままに、心象スケッチを拙い文と写真とで綴ってきました、が

「いろんな方に読んでいただいている、という意識があってはじめて、ここまでこれたのではないか・・・」と、秘かに思っています。

まずは、読者の皆さんに感謝申し上げます。

 

と、同時に、エッセイの読者の方からいただいたご寄付を、

カラサワールド自然基金としてプールし、3種類の絵はがきを発行することができました。

2007年〜「トンボの絵はがき」、2009年〜「カエルの絵はがき」、そして2010年〜「コスタリカの野鳥」の3種類です。

そして、来年は赤城山のヒメギフチョウの保護に取組む予定でおり、

今年の目標200名に近い方からご寄付をいただいております。

1200回を振り返り、改めてお礼申し上げます。

 

さて、今回は、

房総半島の南、安房鴨川のサギ類についてです。

 

房総のKAMOGAWA-SHI は、漢字で鴨川市です。

その鴨川市を流れる河川のKAMOGAWAは、漢字では加茂川。発音は京都の賀茂川と同じです。

今回の舞台は、鴨川市の中の加茂川、河口から1キロほど上流の堰です。

 

堰の落差1.3mほど、

流れ落ちる水の、一瞬たりとも定まらないその変幻自在のすがた・・・、

う〜ん、水の流れというのは、見ているだけで、飽きることがありませんね。

しかも、その堰の上では、1羽のクロサギがじっと静止し、何かを見つめています。

 

流れ落ちる堰の水、1羽のクロサギを見つけました。

 

遡上する魚がこの堰で遮られてしまうため、

岸の両端には魚道が設けられており、次々と小魚がのぼってきます。

「のぼってきます」と書きましたが、流れに逆らってのぼってくる姿は、岸の上からははっきりとは見えません。

 

しかし、魚が次々と遡上しているのは明らかです。

アオサギとコサギが各1羽、魚道の近くで魚を狙っているのです。

コサギは魚道の下にとまり、小魚が急な流をのぼろうとする、その瞬間を狙っています。

アオサギは、魚道のとなりの、ちょっと流れがよどんでいる、水深の深いところをじっとみつめ、大き目の魚を狙っているようです。

 

コサギは、次から次へと、連続して嘴で小魚を捕えます・・・、入れ喰い状態です。

アオサギは、辛抱強くチャンスを待って、ついに電光石火のごとく水中にくちばしを突っ込み、

体長25pもある大きな魚を捕食しました。

 

しばらく観察して気づいたことが一つあります。

サギの胃袋が一杯になったころ、クロサギは接近してきたコサギを追いかけ、追い払ってしまいました。

それだけではありません、すぐ近くでは、コサギ同士の闘いもはじまりました。

追いかけ、睨み合い、ついに1羽が相手に両足でキック、

対するもう一羽は、一瞬のけ反りながらも嘴を大きく開き、反転攻勢。

コサギ同士の闘い、実に激しいものがありました。

 

闘いはますます激しくなりました・・・・

 

闘っているコサギの、目先と足指の色彩は要注意です。

左は婚姻色の朱色なので赤サギ君、右は普通の黄色なので並サギ君

赤サギ君が着地すると、今度は並サギ君が宙に舞い、上から赤サギ君に蹴りを入れます。

2羽のコサギは、上になり、下になり・・・、闘いは激しくなるばかり。

満腹そうなのに、なぜこのような激しい闘いになるのでしょうか・・・?。

 

衣食足りて礼節を知る・・・

という言葉があります、が、礼節どころではありません。

空腹時には、獲物に夢中で、闘いどころではなかったかも知れません、が

なまじっか胃袋が満たされてくるにつれて、「もっと、もっと、もっと欲しい」「冨を独占したい」「他者には与えたくない」

そんな強欲さが頭をもちあげてきたのでしょうか・・・?

 

「貧困は悪である」、確かにそういった一面はあります、が

もっと恐ろしいのは、「満腹なのに、もっと、もっと食べたいという欲望」です。

 

満腹にして闘うサギ類、

大脳皮質の「古皮質や旧皮質」のなせる業でしょうか・・・?

サギごとでは、いや、ヒトごとではありません。

人類の自画像のようにもみえます。

 


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