フィールドエッセイ「旅と自然の心象スケッチ」 第1768回


自著紹介
『身近な鳥のすごい食生活』
(イースト新書)



このたび
イーストプレス社より
『身近な鳥のすごい食生活』( イースト新書)
を上梓しました。


2018年、拙著『目からウロコの自然観察』(中公新書) に次ぐ新書です。
どんな内容か、「ほんのちょっと」 自著紹介です。


まずは、裏表紙にある紹介文から・・・


スズメが群がり鳴きながら食べるのはなぜか?
共喰い・死体喰いも辞さぬカラスの食欲、強靭な胃袋で硬い実をすり潰すハト、
人や動物の行動を利用して巧妙にエサを捕るハクセキレイ…。鳥が空を飛ぶには高カロリーが必要である一方、肥満は飛翔の大敵。
「軽量化」が生きる術である鳥たちの食生活は工夫と策略に満ちていた!
都市に暮らす鳥を長年観察しつづけた著者が、適者生存の
サバイバルを生き抜く鳥たちの食卓に迫る。
この一冊で、身近な鳥を
「見る目」が変わる。


「見る目」が変わるかどうか分かりません、が
本書の最初の読者である若い女性編集者が綴ってくれた文面です。

新書はシリーズ本であり、
シリーズとしてのコンセプトがあります。
イースト新書の場合は、活字離れの著しい若者が読めるもの、写真をみて楽しめるもの
通勤電車の中でちょっと読んで、「ちょっと賢くなったかな・・・」、 といった気分になれるもの・・・・・

そんなところを目指して執筆してほしい・・・、とのことでした。
中公新書に比べるとやや肩の荷が軽く
分かりやすく書くことを
心がけました。

本書の最大の特徴は、
鳥たちの「食生活」に的を絞ったことです。
鳥たちは、何を、どこで、いつ、どのように食べるのか・・・、「食」とはな何なのか・・・・
長年のバードウオッチングを通して、「こりゃ凄いぞ!」
というものだけを思い出しながら書きました。
感動した場面を思い出す作業
ですから、執筆も楽しく
一気に終わりました。

「食生活」について筆者の考えです。
「はじめに」からの引用です。

享保十七(1732)年の大飢饉のとき
立派な身なり人が道端で餓死していた
何と、金貨百両という大金を首にかけたままで・・・
人も動物も、金貨や札束をかじっては生きていけない。「生きる」とは「食べる」ことであることを教えられる。
スーバーやコンビニの棚には食品が山ほど陳列している。金さえ出せば、何時でも、何でも手に入る、と思っている人がいるかも知れない
しかし、それが妄想であるということを、我々は震災や風水害のたびに痛いほど思い知らされてきた。。
日々の便利な生活は一瞬にしてリセットされ、人も動物たちと同じように
その日その日の飲食を求めてさまようことになる

野生動物を観察して気づいたことの一つは
かれらの一生は「食べること」
に尽きることだ。
・・・・・・・・(略)・・・・・・
本書は、身近に観察できる鳥30種類を選び、その食生活に焦点をあてたものである。
観察できる場所や季節などから「都会の鳥」「郊外の鳥」「秋・冬の鳥」、「水域の鳥」に大別し
鳥にとって食べることの意味、食物の種類、捕食や採餌のために進化した嘴や足の爪などの形態、あるいは狩りのテクニックなどについて
筆者が実際に観察し凄いと思った事例などを交えて紹介したものである


「はじめに」 を書いたのは
昨年 (2019年) の12月でした・・・

昨年の12月は、
中国武漢で新型コロナウィルスの感染が発覚したものの世間ではまだ知られていない・・・・、
ちょうどそのころの執筆でした・・・、が、あたかも今日の世界的な非常事態を予感していたかのようにも読み取れます。
改めて読み直してみてびっくりしています。


執筆を終えての印象を
「あとがき」から引用してみます。

本書は企画そのものが興味深かったことから一気に書き終えました。

その一方で、掲載した写真は表紙写真を含めて約190点の多数におよんだこともあり
筆者の撮影した写真(約160点) だけではとてもカバーしきれず、
20数名の方より貴重な写真をお借りしました。


以下は
「お借りした写真」

どれも貴重な一点ものばかり。
もう二度とシャッターチャンスはないかもしれません。

アオダイショウを捕らえるハシブトガラス (松丸一郎撮影)
枯木に長い舌をさし込もうとしているコゲラ (田仲義弘撮影)
嘴に真っ赤な金魚をくわえた都会のカワセミ (越川耕一撮影)
数千羽のカワウの群れが魚群を岸辺に追い込む集団漁法 (越川重治撮影)
関東地方で初めて繁殖が記録されたジョウビタキ (本多滋和撮影)
チュウサギを捕獲してひき裂く迫力満点のオオタカ (山部直喜撮影)
アトリの大群に突入して捕食しようとするオオタカ (篠原五男撮影)
トウキョウダルマガエル (石井秀夫撮影)、ミシシッピアカミミガメ (篠原五男撮影) のモズのハヤニエ
ブラックバスを捕食するカルガモ、ウチワヤンマに襲いかかるカイツブリ (古屋真撮影)
魚を捕らえ、水中から飛び出る一瞬を捉えたコアジサシ (松井一宏撮影)
コアジサシの雛を一瞬にしてかっさらうチョウゲンボウ (早川雅晴撮影)
石のように堅いイシミカワの実を食すドバト (野長瀬雅樹撮影)
銀座のツバメの巣の下に落ちた雄ミツバチのなぞ (山本なお子撮影)
コサギが嘴で水面に波紋をおこし漁をする波紋漁法 (渡辺浩撮影)
鳴き叫ぶゴイサギを呑み込むアオサギ (辻 智隆撮影)、
ヒヨドリを丸呑みにするアオサギ (高橋利江撮影)
ナナカマドの実を食べるツグミ (大橋弘一撮影)

身近な鳥ではないものの、
どうしても本書で紹介したかったのが、 小笠原海域で観察したカツオドリの捕食シーン



逃げるトビウオ、追うカツオドリの攻防 (→p.184)
カツオドリは、大型船「おがさわら丸」にびっくりして空中に飛び出るトビウオを狙う・・・、という賢さです。
この後、トビオウとカツオドリの攻防はどう展開するのか・・・
カツオドリが大型船を利用した狩りであり
「オートライシズム」 の一例です。

筆者の顔写真
いささか気が引けたのですが・・・
ヤマガラを手にした写真を載せました。
もちろん私が撮ったものではありません。(→p.71)
久野公啓氏が撮影したもの、さすがはプロ。「どう見ても10歳は若く見えます
と言いたいところでずか・・・、それもそのはず・・・
10年前 (2010年)に長野県の白樺峠で
タカの渡りの時に撮影した
ものでした。


写真使用を快諾して下さった皆さん、有難うございました。
改めてお礼申し上げます。


最後に
どんな内容なのか・・・、
以下の目次をざっとご覧ください。

目次

1章 都市に暮らす鳥
スズメ おしゃべり採餌と桜の盗蜜
ツバメ アリもトンボもミツバチも捕らえる
ハシブトガラス 共喰いも辞さない旺盛な食欲
ハシボソガラス 賢さの際立つ食生活


2019年9月の台風15号の暴風雨で地面にたたき落とされたスズメを
目ざとく見つけたハシボソガラス、スズメを水に浸け、洗いながらひき裂いて食べました。
(→ p.29)

キジバト 強靭な砂のうで穀物をすり潰す
ヒヨドリ 花も実も虫も貧欲に食べる
ムクドリ ムクドリはミカンを食べないって、本当?
ハクセキレイ もっぱら小動物を捕食する

2章 郊外に暮らす鳥
メジロ 花蜜やコナラのシロップを吸う


カワヅザクラの花で吸蜜するメジロ (→p.58)
先端がブラシ状に分かれているメジロの舌の写真、 (→p.62)
樹木(コナラ) の樹液(シロップ) を吸うメジロの写真も掲載しました。 (→p.63)

シジュウカラ 四季折々の食事の工夫
ヤマガラ 芸達者で人懐っこい小鳥の正体は…
ワカケホンセイインコ 都会に定着した帰化鳥
コゲラ 小枝の枝先でも採餌
イソヒヨドリ 磯の鳥が都市に進出
トビ 東京に適応した猛禽
チョウゲンボウ ホバリングして獲物を狙う
オオタカ 水鳥やカラスをしとめる名ハンター

3章 秋~冬に見られる鳥
モズ 小さな猛禽の必殺技
ツグミ モグラを利用したミミズ狩り?
レンジャク 謎だらけの鳥


地中からミミズを引き出すツグミ
モグラを利用したミミズの捕食法、ツグミの賢さには脱帽です。 (→.121)

ジョウビタキ 日本での繁殖が急増中
アトリ 40万羽の大群に息をのむ

4章 水辺に暮らす鳥
カワセミ 海に出たカワセミ
カルガモ 10羽もの子どもを育てるシングルマザー
カイツブリ 水上生活に適応した生態
コアジサシ カワセミに負けないダイビング
コサギ 多才で技巧的な漁の数々
アオサギ 「鳥ハ食ノ為ニ死ス」
カワウ 「鵜が難儀するウナンギ?」


カワウの集団採餌~江戸川では11~12月ころに大群が飛来し集団で魚群を追うシーンがみられます (→p.177)
この写真は本書には掲載できませんでしたが・・・・ご参考までに。


カツオドリ 「襲う鳥、逃げる魚」の大ドラマ


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『身近な鳥のすごい食生活』 (イースト新書)

本体価格 1000円+税
東京都千代田区神保町2-4-7
〶101-0051 ☎ 03-5213-4700
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